アップデート情報

2023年11月22日の最終発表会での成果物を公開しました! Materials from the final presentation on November 22, 2023 have been released!

各ミッションからの最終発表に用いられた模造紙、テキストを下記に公開しています。
また、各発表の後で行われた地域住民と市役所の方々とのディスカッションを動画でご覧いただけるようになっています。本ページの末尾には、当日の最後にいただいたデルフト工科大学 Steffen Nijhuis教授からのお話の動画を掲載してありますので、ぜひご覧ください。(なお、以下の発表内容は亀岡市における流域空間デザインについて今後の地域内で議論の材料とすることを目的に、4日間のワークショップを通して検討をまとめたものですので、亀岡市としての政策を反映したものではありません。)


【Mission1】
タイトル:文化育む教育の公園
チームメンバー:
Yoshiki Sakuraba (Chiba Univ.)
Zhang Siyu (Chiba Univ.)
Kohei Koide (Kyoto Univ.)
Mikio Hayashi (Tsukuba Univ.)

 

 

 

 

 

<発表原稿>
私たち第一班は保津川公園を対象地として発表を行います。 まず、この空間の特徴、現状分析を簡単に説明します。
まず、あたり一帯は水田となっており、原風景が広がっています。また、アユモドキを代表とした生態系が広がっており、これは守っていくことが必要となっています。
治水の観点からいうと、霞堤の存在もあり、洪水発生時には、一帯が冠水し、治水の役割を持っています。これらの特性、文化を守っていくことがまず重要なこととなります。さらには、ここ保津川公園は、亀岡駅から降りてすぐのところに立地していること。亀岡駅前の広場とつながる場所であること。サンガスタジアムに隣接する場所であることが特徴であり、亀岡の中でもより多くの人が集まり利用する可能性が高い場所であることが特徴となっております。そのためこの場所の魅力が向上すれば、文化を伝えることのできる場所になると考えました。一方で、現状としては、
少子高齢化もあり農業の担い手が不足していること、
農業や生態系の関係性が認知されるべきであること、
さらにはこの土地のポテンシャルを十分に伝えきれていないという現状があります。そのため、この土地の文化を守っていくためにも、人々に、特に将来を担うであろう子供たちが学べる空間が必要であると考えました。
そこで、以下の提案を行います。提案は、保全、魅力向上を土台とした、教育の場となる公園です。次に治水・農林業・生態系の3つの観点において、「保全」と「場の魅力」を軸として、それによって生み出される教育的な意味を考えました。
まずは治水についてです。治水の保全において重要な点として、「かすみ堤の保存」「グリーンインフラとしての公園」
という点が挙げられます。それによって生まれる場の魅力は、「治水システムとして形成される地形的特徴」が挙げられます。
またそこから生まれる教育的な意味は、「治水システムの可視化」であると考えました。
次に、農林業です。農林業の保全において重要な点として、「景観」「水田の活用・循環」
が挙げられます。それによって生まれる場の魅力は、「稲作や新たな野菜・藍染」「農業体験」「水田や木材の利用に寄って生み出される空間・景観」です。
農林業における教育的な意味は、「実際の体験」であると考えました。
3つ目は生態系です。生態系の保全において重要な点として、「アユモドキの生息環境」「生態系と水田の関係性」が挙げられます。それによって生まれる場の魅力は、「アユモドキの唯一性」「親水性の違いによって生まれる高低差や植生の多様性」です。またそこから生まれる教育的な意味は、「親水性の向上」「アユモドキに対する認知の向上」がであると考えました。以上の観点から現状の整備計画を参考に課題点を探りながら提案を考えました。ここからは具体的な提案内容について説明していきます。まずはデザインコンセプトについてです。
流域治水を進める亀岡の取り組みを理解するにはただ水を受け止めるための空間だけでは十分ではありません。特にこの対象地では亀岡の中でも最下流部に位置しているため治水の機能を確保しながらも、流域の最上流に位置する山まで意識を向けてもらうことが亀岡の流域治水を理解するために重要だと考えました。そこで木材利用、循環をデザインコンセプトとして計画しています。木材は防腐加工は行わずに自然に朽ちていくことを前提に定期的にメンテナンスをしながら管理をしていきます。このメンテナンスによって地域の人々は資源の循環を感じられます。また地域住民が参加できるイベントとしてメンテナンスを行うことで、木材の手触りや香りなど木の良さを肌身で感じるきっかけを作り、木育を促進しながら、メンテナンスを通して公園にも愛着を持ってもらえる機会ができるのではないかと考えました。また木は朽ちていくことで人のための空間から生物の棲家へと変化していきます。朽ちた木材も一部残していくことで木のサイクルや、生態系との関係を感じられます。
以上のことから木材利用循環をデザインコンセプトとして提案を考えました。こちらが平面図です。
全体に水田を残し、その中に広場を点在させ、人々が水田空間の中で滞在できる公園としました。農地の内訳はこのようになって
おり、左側が既存農地、右側が市民農園となっています。次に設計手法です。
元々の水田の区割りをできるだけ利用しながら、サンガスタジムや、亀岡駅、開発中の住宅地など主要な人の動線を考慮して、都市から農地へ地域の人が足を運べるように計画しました。また広場の位置はサンガスタジアムからの視線や亀岡駅から山への軸、夕日の沈む方向などを考慮して決定しています。ここからは治水、農業、生態系それぞれに関するデザインについて説明します。まずは治水についてです。
霞堤と公園の関係性を考えました。
現在の公園計画から広場と堤防の外にある農地の機能を入れ替え、保津川沿いにまで公園を広げていきます。こうすることで農地を比較的安全な場所に移し保全しながら、霞堤の構造は水を受け入れる機能だけでなく保津川沿いの河川敷空間につながるメインエントランスとしての機能を持つようになります。堤防の内側には木材を利用してステップを設け堤防への接続性と景観の繋がりを向上させました。市民農園と河川敷にできる広場に挟まれた霞堤は主に人のための歩道として整備し、ウォーキングやランニングのコースとして利用する場にすることで霞堤の構造を体験として感じられるようにしました。こうすることで歩きながら保津川と山の景色や都市と田園の景色を楽しむことができる堤防になると思います。次に農地についてです。このエリアでは水田の区割りをできるだけ残し、それぞれの区割りの高さを変えています。こうすることで浸水時にはその水量によって景観が変化していきます。またこの水位との高さ関係によって育てる作物にも変化をつけています。1番低いところではあしなどの水生の植栽が入り込む池として、2番目の高さでは稲や水藍を育てる水田として、1番高いところは畑として利用していきます。また水田の区割りに沿った道は木材を利用して整備しています。メインの道には木道を整備しあぜ道にはウッドチップ、水路を横断する道には丸太を利用していきます。次に生態系についてです。
蘇我谷川と水路のエリアに着目しました。この場所は農閑期には水位が低く、護岸も川底に降りられるようには設計されておらず、綺麗な水に触れることができない状態になっています。そこでこのようなプラットフォームを設置して水位が低い時には水辺に降りられるようにしました。この材料として木材を利用していきます。また川底には蛇籠に枝を詰めたものを設置しています。こうすることで蛇籠の中の枝は生物の隠れ家を作りながら徐々に分解されていき、プランクトンの発生を促すことでアユモドキの保全にもつながるのではないかと考えています。このように木材を積極的に活用していきながら整備、更新されていくこの公園では地域の人や亀岡に観光しにきた人それぞれに体験としてこの場所の魅力とまちづくりの方針を感じてもらいます。体験を通した経験はこれから亀岡を担う人々の重要な共通認識を育んでいくのでは無いでしょうか。以上で発表を終わります。
ご清聴ありがとうございました。

<質疑応答動画>


【Mission2】
タイトル:緑・水・歴史を留める
チームメンバー:
Benjamin Morrison (Kyoto Univ.)
Kohei Uesaka (Kyoto Univ.)
Nao kurata (Chiba Univ.)
Yoshino Ikemi (Tsukuba Univ.)

 

<発表原稿>

これからmission2の発表を始めます。

私たちの対象地である平和池は、約70年前にダムの決壊によって被害へと繋がってしまったという歴史を持つエリアです。また、現在は住宅地が隣接しており、多くの周辺住民が散策している場でもあります。

下流域では年谷川、保津川へと繋がっています。下流に繋がる年谷川沿いは予定されていたほとんどの河川整備は完了していますが、近年の異常気象、降水量増加を考えるとさらに治水能力の整備・強化が必要となっています。ですので、今回のWSテーマである流域治水という考え方に基づいて、そこに寄与できるような提案を行いたいと考えています。

私たちは以下を目的とした対象地の公園整備を提案します。

「過去の平和池水害の歴史を学び、新たな治水を行いながら、亀岡の防水に貢献する。また、地域の人々が緑・水・歴史に触れ合える場所を創出する。」

その目的を実行するには、次の戦略を提案します。

先ず、一つ目は、跡地周囲の豊かな自然を活かし、自然と水を感じられる経路を作ることです。

二つ目は様々な貯水機能を持った場による段階的な雨水貯留を創出することです。

それから、最後の戦略は、ダムの決壊という歴史と災害の記憶を継承する場所を計画することです。

より具体的に、公園を三つの異なるテーマのエリアで分けるように提案します。公園の東の方は体験のゾーンであり、公園の訪問者が遊んだり、休んだりすることができる場所です。それから、公園の西側は学びのゾーンです。最後に公園の北部はダムと亀岡の歴史を中心するゾーンです。

その歴史のゾーンでは、亀岡と藤沼湖の互いに持った災害の歴史と交流を表すアジサイでまだ残った道の両側を飾ります。そして、その道の先にある唯一の廃墟を改修して、歴史を学んで、感動する場所として作ろうと考えています。かつてのダムがあった場所に、ダムの20メートルの高さで、谷をまたぐ橋を作るように提案します。それによって、橋に立つ方々も、公園の真ん中にある合流広場に立つ方々も、読んだり聞いたりするだけではなく、ダムの大きさを感じて頂けると考えます。その橋の向こう側にはバルコニーのような展望台があり、公園の自然と歴史を体験するのに貢献します。

公園の東側はアクティビティエリアです。ここでは豊かな生物資源と触れ合えるような親水活動が行われ、様々なアクティビティが発生します。川を流れる水量を調整して水深を変化させ、足を水につけたり、魚を捕まえたりできます。また、水が浸かる部分とそうでない部分が発生することで植物や生物の生態系が多様に変化し、同じ場所でも訪れるたびに新しい発見が生まれます。これは、植物・生物観察のフィールドワークを行う場として適しています。

また、川辺や飛び石を渡って散策したり、草原に寝そべることで渓谷に挟まれた空を見ることができたりと、この場所・この地形特有の体験が味わえるようなアクティビティも発生し、親水空間としての有用性が高まります。

次に、学びのスペースと管理運営のシステムについて説明させていただきます。

学びの場に関して、大きく公園の治水システムについての体験学習の場と真菰の養殖の場から計画しています。

まず、治水システムの体験について、ミニチュアの模型の中に入って、我々の計画している公園がどのように貯水、保水を行っているかを実際に体験しながら学ぶことのできる場を考えています。

続いて、真菰の栽培について説明させていただきます。

真菰は伝統産業の一つである京簾の生産に用いる材料であり、希少な素材です。ですが、現在は国内での生産は少なく、輸入に頼っているという状況です。

この栽培生産を行い、体験学習等による伝統、歴史の継承、また、地産地消の流れを生み出していけたらと考えています。

つぎに、管理、運営のシステムについて、4つの団体からなる公園運営組織を構成することを考えております。具体的には、亀岡市、すだれ製造企業、ダム水害伝承の会、そして地域住民が参画をし、運営組織を形成します。

そこに対して、環境保全や真菰の生産や災害の記憶の継承による歴史、文化の保管に共感をいただいた出資者、投資者から管理費をいただくことで管理運営を行なっていくことを考えています。

以上です。ありがとうございました。

<質疑応答動画>


【Mission3】
タイトル:まちを彩る緑のネットワーク
チームメンバー:
Maria Miyazono (Chiba Univ.)
Yuya Okamoto (Ritsumeikan Univ.)
Song Wentao (Kyoto Univ.)
Yu Watanabe (Chiba Univ.)
Yui Sekiguchi (Tsukuba Univ.)

 

<発表原稿>
・目的:街に緑のネットワークを巡らせることで、人をはじめ様々な生き物の生活に彩りを与えるとともに、雨水貯留地を確保し雨水排水のスピードを遅くさせることで水害の被害を最小限にする。
・戦略:街のオープンスペースに治水機能を有した緑地を配置し、駅と既存の緑地の間をつなぐグリーンベルトを創出する。
・戦術
①:既存の都市のオープンスペースにレインガーデンを設ける。
②:南郷公園を拡張し、治水機能を高める
③:駐車場の集約化により、オープンスペースを作る。

(発見・気付きの地図について)
亀岡駅南口のメンバーの気づきを分析した結果、駅南エリアの中でも4つの特徴に分類できると考えた。
①メインエリア:駅から南郷公園を結ぶ。駅を降りてきた人はまずこの場所をみることになるが、現在はあまりシンボル性が感じられない。
②南郷公園周辺エリア:南郷池に沿うように散歩道は整備されているが、ベンチが少ないなど、休憩や佇めるたまり場不足を感じた。また公園と北部の道路の間に住宅が並ぶなど、周辺からの視線や動線が切断されていると感じた。

メインエリアを境に東西それぞれに
③東エリア:イオンやパチンコなどの入る商業色の強いエリアである。大規模建物のほかに大規模駐車場が数多くあり、周辺からみた景観としても一番影響力が大きいと考えた。
④西エリア:住宅地の多いエリアである。空き家、空き地も数多く存在した。

(アイデア出し)
アイデアを出し合った結果、大きく3つのジャンルに分類した。①マスタープラン関連、②緑化関係、③その他である。
①マスタープラン関連:駅ロータリーが南郷公園までの軸線状にのはみ出ているためロータリーを移動させる案、ポケットパーク程度の緑地の複数配置により駅と南郷公園の視覚的なつながりを作る案、制限速度を20km/hに設定し歩行者・自転車・自動車が道路内で共存をはかる案などが挙げられた。
②緑化関係:南郷公園を北側に拡張させることで道路側からの景観を開く案、空き地にプランターボックスや空き家に壁面緑化を行う案、駅から南郷公園に大きな緑地帯を設ける案などが挙げられた。
③その他:南郷池内にウッドデッキを巡らせることで親水空間をつくる提案、南郷池に隣接する空き家を改修しカフェや宿泊施設として利用する案が挙げられた。

(駅南の現状分析)
・ハザードマップ:
ハザードマップによると駅南エリアでは最大2-3m、半分以上エリアで最大1-2m浸水被害が考えられており、エリア一帯的に浸水することが考えられている。
・グリーンエリア:亀山城址、南郷公園北部に通る道路に植えられている銀杏並木、南郷池から東へに排水される支流沿いの緑地が、現状の主な緑地である。
メリット:亀山城址跡は緑地として規模が大きい。また歩行者としては車が通らない場所であるため歩きやすい。
デメリット:周辺からは見えづらい。また見えたとしてもそれが一体何かが分からず、初めて来た人が立ち寄るか微妙である。マクロ的な視点で見ると、みどりのラインは形成してはいるが、ヒューマンスケールで見たときに駅前との分断を感じる。
・視覚的なオープンスペース:南郷公園周辺の公園、駐車場が主な視覚的オープンスペースと考えた。
・水のエリア:南郷池へ流れ込む支流、南郷池、南郷公園から排水されていく支流が現状の水辺である。
・雨水排水の流れ:
南郷池が駅南エリアの雨を一度貯留し、そこから雑水川へ流れていく。

(提案)
・ダイアグラム:緑地を複数配置し、みどりのベルトで街と駅をつなぐ
・方針:A-Fまで計6つの緑地を提案する。
・A:大駐車場をレインガーデンへ
街区の雨水をこのレインガーデンで一時的に貯留することで、排水スピードを緩める。またこのレインガーデンは住宅や小・中規模建物に囲まれており、周辺のカフェやレストランからは庭の景色を楽しむことがことができる。
・B:駅から南郷公園をつなぐシンボルロードとその周辺
駅と南郷公園を結ぶ道路は現状4車線であるが2車線に減少させた上で、緑地帯を挟んで左右対称に通っていた道路を西側に寄せる。空いた東側には、現状より大きな緑地帯を設ける。これにより駅と南郷公園を結ぶ道に、今までにも増したシンボル性を生み出すことができる。歩行者は今まで以上に安心して歩くことが可能となる。。さらにこの緑地帯は周辺の雨水を保水することができるだけでなく、夏には樹木による光の遮断や蒸散効果により気温の上昇を抑えることができる。
加えて亀岡文化資料館を現状パチンコ店が位置する場への移設も提案する。文化資料館に加え観光センターの機能を追加することで、駅方面からシンボルロードに沿って歩いてきた亀岡への訪問者は亀岡の文化や歴史を知ることができる。新亀岡市文化資料館の前庭は、シンボルロードの緑地と一体となった大きな緑地が設けられる。ここで行われる市民農園は、駅南エリアが開発される前の、かつての水田の風景を彷彿させる。
・C:南郷池へ注ぐ支流の護岸改修
南郷池へ注ぐ支流の護岸拡幅を行い、河川断面の拡幅を行う。現状ではこの支流は両岸とも駐車場に囲まれている。そのため駐車場を立体化し、集約を行うことで周辺の敷地を確保する。小さいこどもが遊べるような、浅く広い親水空間となる。
・D:南郷公園隣接する空き家の改修およびデッキの設置
南郷公園に隣接する空き家の改修を行い、カフェや宿泊施設を呼び込む。空き家は南郷池側に木製デッキが伸びる。亀山城址や郷池の景色を楽しみながら駅前での食事や宿泊が可能となる。
・E:古世橋跡の雨庭
現在イオン南部のこの歩道には古世橋跡の石碑のみが残る。そこでこの歩道に日本式の石庭の雨庭を設ける。雨庭という雨水貯留という機能を組み込みながら、京都の枯山水の水はないが石でそれを表現する手法を引用し、かつてこの場に水が流れ橋が架かっていたという事実を表現する。
・F:移動後の亀岡市文化資料館
敷地Bへと移動した亀岡市文化資料館跡地は、この地が雑水川との合流地点に近く、過去何度も浸水しているということから調整池を有した公園とする。日常時は市民のための公園として利用されるが、雨天時は調整池となる。

(まとめ)
流域治水・水害への対策はどのようなエリアでもできることがある。今回の駅南エリアは亀岡の中でも商業的な機能が一番高い場所という特性を考慮し、小規模な緑地を商業的・観光的機能と絡めながら、分散的に配置する案を提案した。敷地ごとの特徴をよく考え、その特徴に見合い、その土地でできる流域治水を考えていくべきだと思う。

<質疑応答動画>


【Mission4】
タイトル:水と緑を受けて!
チームメンバー:
Qing Huang (Chiba Univ.)
Keisuke Takatsuka (Chiba Univ.)
Saeki Kaisei (Kyoto Univ.)
Aoi Ota (Tsukuba Univ.)

 

<発表原稿>
(背景、課題、ポテンシャル)
・敷地対象地である安町大池は以前より公園化や周辺住民からの池の水量の縮小等の要望がありました。
ここでは、池や小川、背景の山の豊かな自然や見晴らし、アクセスの良さがあります。
一方、周辺の空き地や未整備な状態が続いてることや雑水川流域での治水の問題があります。

(提案、戦略)
それらを踏まえて、
安町大池の水量を減らして、上流側での治水と周辺地の一体的な使い方をするために、2段階のフェーズ分けされた、エコロジー、セーフティー、レシーブのネットワークを整備します。

第1フェーズでは、
調節機能を有した安町大池や古池、五反田池を中心に、亀岡の産業と連携したイベントや住民が憩えるカフェを運営できる小規模複合施設等の2種類の
公園を作り、滞留空間を作ります。

第2フェーズでは、
雑水川東側の川幅を広くし
下流部への負担を減らすように治水を行う親水公園を整備することで、滞留空間を拡大します。

次に,各ネットワークについて具体的に見ていきます.まず,セーフティーに関してです.背景として先ほども挙げられた通り,雑水川では10年確率の降雨に対応した整備が下流域でとどまるとともに,上流域では河床が低いままとなっています.これらに加え気候変動による影響を踏まえると,上流域での治水計画が必要であると考えています.

次にエコロジーに関してです.こちらは現在,安町大池をはじめとする池では外来種が存在しているとともに,自然と分断されたコンクリート等によるハード整備によって,生態系が崩されている状況となっています.そこで,雑水川上流部のきれいな小川の風景,周辺の池,山々というポテンシャルを活かして,亀岡特有の生態系を様々な箇所で実現できたらと考えています
最後に,レシーブに関してです.こちらは現在,先ほども述べましたようにハード整備により,自然と人が断絶されるとともに,市民が集まらない未整備の広域の土地が広がっています.そこで,自然と触れ合える空間,市民の交流の場,滞留空間を安町大池をはじめとしたさまざまな場所で整備することを考えています.
エコロジー,レシーブを通して,この土地に人々が魅力を感じ,さらなるセーフティーを進め,それがエコロジー,レシーブに還元されるという一種の循環が出来ればと考えています.

ここからは,3つのネットワークを融合した具体的な整備を説明します.
まず,waterplanについてです,1つ目は,安町大池の貯留可能量を現状よりも減らすことで,周辺の人々の不安をなくそうと考えています.そのうえで,災害時には少量ながらも一時貯留することを目指します.2つ目は,古池・五反田池で,普段は水を掃き出して,現況より水量を少なくし,緊急時には周辺の山々からの雨水を一時的貯留することを目指します.

以上の1つ目,2つ目は第1フェーズで行います.
次に第2フェーズでは,雑水川上流部東側の川幅を拡大することで,豪雨時の雨水の流れを緩やかにすることを考えています.
以上から、上流部から下流部まで氾濫を防げればと考えています.

次に,Park Planについてです.第1フェーズでは,雑水川西側を整備し,第2フェーズでは,東側を整備します.安町大池の整備についてですが,現況の堤防を低くすることに伴い,堤防上に参道を整備するとともに,水に触れ合えるよう一部デッキを整備します.さらに,安行山磐榮稲荷宮への導線を確保することで,他の施設へのアクセス性を担保し,周辺に小規模複合施設やイベントもできる市民公園などを整備することで,滞留空間を創造します.また,古池,五反田池周辺の緑地は静かで過ごしやすいという特性を活かし,キャンプ場を設けることによって,安町大池とは異なる機能を持たせます.第2フェーズの土地に関しては,古池,五反田池周辺の開発と連動してBBQ場やドッグランを作るだけでなく,駐車場を設けます.さらに,雑水川を拡幅することにより,一時的な治水能力を確保します.これらの整備では,安町大池付近の視点場を有効活用しています.

次に,Ecology Planについてです.1つ目に,水に関する生態系について説明します.池については,かいぼりにより外来魚の侵入を防ぎ,小川については,在来の小魚やホタルを保護します.2つ目に,緑に関する生態系について説明します.公園については,落葉樹,虫や鳥の居場所となっており,それらを保護し,田んぼについては,水の変化を感じることができ,小川や公園と同様の動植物の居場所となっており,それらを保護します.

最後にStreet Planについてです.まず,市役所からの導線を確保すべく,横断歩道を南北に設置します.また,Park Planでも述べましたように,堤防上に歩道を設けることで,水面に近い歩行者空間を作ります.これらに加え,山道や雑水川に近い遊歩道を整備し,自然を肌で感じることができる機会を創出します.

発表は以上になります.ご清聴ありがとうございました.

<質疑応答動画>


【Mission5】
タイトル:水でひろがる資源のリレー
チームメンバー:
Erika Ida (Chiba Univ.)
Yaxin Lu (Chiba Univ.)
Michelle Lin Allgeier (Kyoto Univ.)
Meiko Cho (Ritsumeikan Univ.)
Rin Yoshioka (Tsukuba Univ.)

<発表原稿>
私たちの敷地は、河原林町と保津町の集落です。タイトルは「水でひろがる資源のリレー」です。
背景:水が作ってきた亀岡川東の風景があります。このエリアでは水害に対して生まれた石垣の景観や、多数の寺・神社の祭礼などが現代も残っています。
課題:近年の河川整備で洪水の頻度は低下しました。しかし、今のままでは気候変動に対処できないと言われています。左下のグラフがそのデータです。
ポテンシャル:もし田んぼダムを導入すれば82万m3の水が貯水可能です。比較として、日吉ダムの貯水可能量は6600万m3です。しかし、現状では農家の負担と不安が大きいため導入しづらい状況となっています。
提案:そこで私たちは、地域内の資源(水の景観)と治水(田んぼダム)をつなげる仕組みを提案します。

まずビフォーの図で現状を説明します。地域内では歴史的な資源のツアーが行われていますが、外部には発信されていません。また、農家は作物が浸水被害を受ける可能性がありますが、十分な補償制度がありません。さらに、農家とそれ以外の地域住民のつながりが希薄です。
「アフターの図」では、田んぼダムの導入により、地域全体のつながりが生まれます。田んぼダムを観光資源と合わせてプランニングすることで、水と生きる文化が深い集落景観を継承しつつ、田んぼダムを持つ農家にも利益が回るような資源のリレーを提案します。

具体的な仕組みを説明していきます。農家は田んぼダムの日常的な管理をします。貯水高さは30cmが基本であり、この貯水高さによる稲の生育や味への影響はほとんどないと報告されています。田んぼダム管理の農家負担を減らすため、大学の農学部を誘致し、スマートコントロールせき、遠隔で自動操作できるものを導入し研究開発に活用してもらいます。一部の農家は民宿やレストランを経営し、観光客の方に亀岡の米を食べていただく、また農業体験の機会とします。また、観光客は河原林町や保津町で歴史資源をめぐるツアーに参加します。これは既存の地元住人の方による歴史ツアーを拡張したルートで、石垣や寺、神社、季節ごとの祭礼や山陰古道をめぐるものです。観光客のモビリティにはレンタサイクルを導入します。ステーションの位置はバスルートと連携しており、雪の降る冬期には主にバスを利用してもらう想定です。運営は亀岡市が行い得た利益はツアーと合わせて内5%を水害補償基金として貯蓄します。

以上が、田んぼダムを運用していても、米に被害が出ない平常時の説明です。つづいて、氾濫により通常の運用時には発生しない、稲が深く浸水して穂まで浸かるような大規模な水害が起こった際の説明に移ります。そのような災害時には、先の水害補償基金を活用し、浸水被害を受けた農家を補償します。補償というのは、まず、浸水してしまった米を、基金の一部を利用して市が農家から一括で買取ります。そして、その米を地域の小中学校給食等に提供します。また、農泊などで観光客にも食べてもらいます。水に浸かった米と浸かっていないコメは、短期の浸水であればそこまで品質に差は出ないということですが、食べ比べたりすれば、味に変化があってもなくても、食べるという体験が、水害の多いこれらの地域について学ぶ機会になると考えます。
また、実際に具体的な試算も行いました。ハザードマップと農地の図から、浸水が想定される水田面積と米の量を計算し、それを買取る際に必要となる水害補償金額が、観光で得られる利益で賄えるか確認しました。試算の結果、地域に1日5人の農泊客と10人のツアー客が訪れれば、10年に一度大規模水害が発生しても補償ができると想定されます。

最後に将来の広域的なビジョンを説明させていただきます。僕たちの提案では、観光資源の活用と田んぼダムの設置という小さな操作で、河原林町・保津町エリア、将来的には亀岡全体が水と共に生きるモデルとしてブランディング化されることが期待できます。
また、それによって亀岡が注目され、京都府や国のような行政機関も田んぼダムに対する取り組みを促進し、地域への還元があると考えられます。亀岡がモデルとして成功すれば、流域全体の似ている地域や全国の同じような課題を持った地域にも、似た仕組みが導入される可能性があると考えています。今後の気候変動に対しての流域全体の被害が減少しつつ、上流から下流の観光資源の連携を生かして、流域全体が水と共に生きる活気のある街になると期待しています。

<質疑応答動画>


【Mission6】
タイトル:Mountain Forest Fun Club
チームメンバー:
Jingshu Cui (Chiba Univ.)
Takumi Sumimura (Chiba Univ.)
Riho Terasawa (Tsukuba Univ.)
Yukiko Murakami (Ritsumeikan Univ.)

<発表原稿>
6班の愛宕谷川山林エリアの発表をさせていただきます。
まず、山は、水や木など私たちの生活に必要不可欠な存在です。
しかし、現在の山の状況をご説明すると、
この愛宕谷川山林エリアは倒木が大きな問題となっています。この倒木が水をさきとめ、決壊して起こる洪水の可能性をもっています。
また、日本全国においても倒木による様々な被害が発生しています。
だからこそ、我々はこの倒木の恐ろしさ、今の山の現状を知るべきであると考えます
そのために私たちは、山を知るきっかけとなる提案をします。

提案内容としまして、洪水の可能性を引き起こす倒木を現地活用し、整備することで川を含めた山全体の環境を改善します。

具体的にどのように活用するかと言いますと、大きく二つの方法に分けられます。
一つ目は、そのままの倒木の現状を残し、人々に見てもらうこと、ありのままの自然を体感してもらうこと、二つ目は、倒木を使った様々なアクティビティを実施することです。

こちらの地図は等高線を読み取り、倒木を含む山の様子や傾斜、道と川の関係性などの情報からアクティビティが展開できそうなエリアをピックアップしたものです。
その上で田んぼ、人々が暮らす街、山林、山林上部のため池までを土地の性格に基づいてエリアを大きく3つに分け、そこに適するアクティビティを考えました。これらのアクティビティは先ほども申しましたようにできるだけ倒木を活用したものであったり、治水、親水に関するものや地域に関係するものを扱っています。
まず麓のエリアは人々が暮らす街に一番近く、さまざまな年代の人が関わりコミュニティが生まれやすいアクティブな性質をもちます。

次に真ん中のエリアは道幅が狭い、両側の斜面が急、倒木が多いなどの特徴があり、そのままの現状を生かした教育やあそびの性質をもちます。
そして1番上のため池があるエリアは平坦で、利用者の心身の健康を促進したりリラックスさせる性質をもちます。
ではこれから4つのペルソナを用いて詳しくどんなアクティビティがあるか説明します。

タイプA
・4人家族(父:会社員34歳 母:会社員36歳 長女:10歳 長男:7歳)
・亀岡市在住
・自然が好きで時間があれば山に遊びに行く

9:00 麓にある地元商品が売られるマルシェでお昼ご飯用のサンドイッチを買う
10:00 プレイパークに到着!倒木で作られたアスレチックで遊ぶ。親水空間である池も遊具と共にある。また、倒木がそのままになっている様子を見ることもできる。
12:00 遊び疲れてお腹が空いたので買っておいたサンドイッチを食べる。足元には流れる水が触れていて気持ちがいい。倒木を積み上げいくつか段差を作ることによって流れが緩やかになっている
13:00 倒木を使って作られた楽器を体験したり木材工作ワークショップで木に触れて遊ぶ。
15:00 ため池のエリアに到着、片方のため池を利用して作られたビオトープで自然観察をしたり、倒木によって作られた東家でおやつを食べる。
17:00 暗くなる前に下に降りる

タイプB
・独身男性(41歳)
・サウナ、ゆるキャンが趣味で飲食が好き
・都心に住み働いているため、週末に亀岡に来て自然を堪能している

18:00 土曜日の朝はゆっくり起きて、夕方に麓のビジターセンターの中にあるセレクトショップで今晩のお酒とおつまみを買う。こだわりお肉のソーセージとクラフトビールだ。
20:00 地元の製材所さんの木材を使ったサウナ小屋でゆっくり。流水を利用した自然の水風呂で星を見ながら整う。
22:00 サウナでゆったりした後はお待ちかねのご飯タイム。ため池のそばのキャンプサイトでゆるキャン、綺麗な景色と静けさを楽しむ。24時には就寝しよう。
7:00 鳥の声で起きたら静かな水を眺めながらコーヒー、読書タイム。倒木をカットしてできた丸太は机にも椅子にもなる。
9:00 麓に戻って古民家に住む地元農家さんが経営する和定食屋さんの朝ご飯定食をいただく。地元住民にも人気のこのお店は溜まり場になっていて、もうだいぶお友達が増えてきた。また明日から仕事頑張るぞ〜〜

タイプC
・20代後半の夫婦(夫:28歳エンジニア、妻:27歳ハンドメイド作家兼デザイナー)
・2人ともリモートワーカーで場所と時間の融通が効く
・麓に小さな畑、田んぼを所有しており、食べるものや使うものにこだわりがある

6:00 早起きして週に数回自分達の畑と田んぼの水やり。山からの恵みを実感する。小さい土地で自分達が食べる分だけを育てているけど十分満足。
9:00 倒木を薪として利用し、薪ストーブの熱で朝ごはん作り。さっきとれた野菜を使う。里山の暮らしを体感する日々。
13:00 家事を済ませてこの日はお昼過ぎから顔馴染みのオーナーが店主を務めるカフェで仕事開始。今度このお店に妻のハンドメイド作品を展示させてもらうことに。
19:00 仕事終了
20:00 今日は少し森の中に入ったところで森の映画祭が開かれるので家から料理を持ってお外で夜ご飯。倒木を使った丸太家具やハンモックでゆったり過ごす。

タイプD
・オランダからの観光客
・自転車が好きで、シクロクロスのレースイベントがこの場所で開催されると知りやってきた。

9:00 麓にあるビジターセンターで自転車レンタル情報や市内のお店で使えるクーポンをGET!
10:00 少し歩いたところでイベント受付、レースのエントリーをし、シクロクロス中級者レースに参加。他にもトレイルランやワンちゃんレースなど様々な人が楽しめるものもあった。
12:30 水の流れを利用して水車でそばの実をひいているお蕎麦屋さんでお昼ご飯。
15:00 たくさんのキッチンかーをショップが集まる場所でぶらぶらショッピング。亀岡のいいお店もたくさん知れた!
17:30 イベントが終わり、今日できた友達とまちの食事処で夜ご飯を食べることに。まだまだ亀岡を楽しめそう!

これらのペルソナが示すように、亀岡に現在住んでいる人から都心や海外から亀岡に来た人、など様々な人に対して山林、また水との関わり方を提示することができます。亀岡に住んでいていつでも山林に足を運べる人はもっと山を身近な存在として認識し、一緒に育っていくような意識を持たせる。外からたまに亀岡に来る人やはじめて来る人に対しては興味を持ってから参加するまでのハードルを下げ、なるべく多くの人に気にかけてもらえるような状況を生み出します。
続いて具体的にこれらのアクティビティを継続させる仕組みについてお話し致します。

これが全体のステイクホルダーとなるんですが、まず左側の部分を説明いたします。先ほど具体例としてあげさせていただいたアクティビティを行うプレイヤーの中にはカフェやレストラン、アートに関するもの、ゲストハウスや、スポーツ関連の方などを想定しています。
この方々が倒木や川を利用して山で様々なアクティビティを起こします。そこにユーザーとなる地元住民、観光客が遊びや癒しを通して、山への関心を生みます。ユーザーからプレイヤーに参加費としてお金が落ちるだけでなく、この愛宕谷川沿いで起きるプレイヤーとユーザーの繋がりが他の地で起きることを予想しています。
このような経済だけでなく、コミュニティが生まれ、拡大するような循環が生まれることを期待します。
また、このプレイヤーの方々を支えるサポーターとして亀岡市の保津川まちづくり推進議会や森林組合などがあり、プレイヤーの活動の申請を許可する役割があります。また山や川、そこで行われるアクティビティを支えている財団やアウトドア用品をレンタルする企業が、備品や支援金サポートを行い、アクティビティを起こしやすい環境を作り出します。山の土地を所有する地元住民の方々に対しては、サポーターとしている亀岡市が土地の権利を借りる代わりに土地代を払うような関係になっています。

まとめに入りますが、ここで重要なのはこのような活動が点で終わるのではなく、細かい活動が線として繋がり、大きな循環を徐々に作り出していくことです。
この倒木を生かした治水流域のまちづくりは川下の集落の方々、山の所有者の問題だけではなくて、
亀岡含む京都全体、関西全体に繋がっているものであると考えます。

このように、この提案の範囲で完結せず、地域全体のアクティビティ同士が互いに結びつくことで、相乗効果が生まれ続けることを期待します。

<質疑応答動画>


【Mission7】
タイトル:Natural Landscape saves Lives
チームメンバー:
Fuhao Sun (Chiba Univ.)
Katerina Pavlou (TU Delft)
Moe Kitajima (Chiba Univ.)
Yuya Tsuitaki (Kyoto Univ.)
Yuta Suzuki (Ritsumeikan Univ.)

<発表原稿>
私たちは七谷川流域担当ですが、厳密に七谷川の周辺だけでなく、七谷川に流れ込む流域全体に対して広く提案させていただきます。
タイトルは「暮らしを守る原風景―亀岡ならではのランドスケープ構造を活用した水と緑のネットワーク」です。
目的は、水を受け止めること、生態系の保全、文化の保全です。
私たちの戦略は、まず、亀岡の原風景から、ランドスケープ構造の原則を読み解き、次に、ランドスケープ構造の原則を七谷流域に適用してデザインを行い、そうすることで原風景が人々や動植物の暮らしを守る、という流れです。
私たちが見つけた亀岡の原風景のランドスケープ構造原則は、7つあります。1つ目は、谷のところに水が溜まって、ため池をつくることができる。また、斜面には手を入れて林業に利用して、それが地面への水の浸透を促進する。また、川の合流するところには、洪水がよく起きる。また、カーブした用水路の周りに、非整形の田んぼがある。また、山と田んぼの間の水害から守られたところに村ができる。池には、流れ込んできた泥がたまって、コウノトリやオニバスなど貴重な動植物を育てる。水の流れはオニバスの種を運んだり、アユモドキなど生物の移動手段となったりする。
私たちは、この原則を適用して、より多くの水と命のための空間をつくります。そうして、水と緑の原風景をグラデ―ショナルにつなぎ、人や生物の生息地を広げていきます。

私たちの班はこれらの原則を利用して、七谷川流域に原風景を拡張しました。
こちらのマップが私たちの提案するマスタープランになります。これらのネットワークは5つのレイヤーから成り立っています。1つ目は山地の谷。2つ目は山裾の溜池。3つ目は川。4つ目は相互につながり生息地をつなぐ池。5つ目は田んぼの中の水路です。
このマスタープランは1つのフレームワークです。それぞれ代表的な場所でデザインの説明をします。
1つ目は山地の谷の部分です。ここでは、段を作ることで水の流れを緩やかにし、今以上に管理のしやすい流域になります。また、浸透性舗装の道路やベンチを設置することで、雲海を見下ろすスポットになります。
2つ目は山裾の集落地域です。このような場所では山の傾斜に沿って集まった水を貯水する溜池をデザインします。溜池を複数経由することで水の流れが遅くなり、大雨が降った際に下流域にまとめて水が流れるのを防ぎ、亀岡の伝統的な風景を守ります。
3つ目は川の合流地点です。このエリアでは、川の幅を広げることを提案します。川の幅が広がることで、エリアの貯水量が向上し、大雨時にも川の速度が緩やかになります。また、このエリアには湿地帯が形成され多くの動植物の生息地になると共に、飛び石を設けることで地域の人にも親しめる場所になっています。
4つ目は生息地をつなぐ池です。この場所では、不成形な田んぼの隅を利用して、貯水池を作ります。貯水池を作ることで、上流部に生息しているコウノトリやオニバスなどの貴重な生物の生息地が拡大します。
5つ目は田んぼの用水路です。この場所では、現在のコンクリートで舗装されている水道を自然素材のものに変える提案をします。自然のものに変えることによって、水の流れを緩めつつ、新たな生物の生息地を提供します。また、遊歩道や木材を利用したベンチを設置することで、用水路が地域の人の生活に身直になります。

以上のように原風景がつながり山地から、山裾、平地まで人や生物の生息地が広がります。
私たちのデザインはこのように亀岡ならではのランドスケープ構造に手を加え、あらゆる場所、ものが関係しあう原風景を拡張したいと思います。
現況としては、例えば天井川の整備が進み、人の命が守られる一方で、川をコンクリートで固めなければならないという事情により、生態系が脅かされているというように、それぞれの関係性が希薄化していると言えます。
そこでこのランドスケープに手を加えることにより、将来的には、川に対しての危険意識を抱くことなく共存できる、そして、生態系が戻ってくるとそれを見にくる人も増える、そえしたら、木材を活用した施設も増えていくといった、水や木材資源、経済の循環が活性化し、全ての生き物が安全で豊かなくらしのできる流域を目指します。

<質疑応答動画>


【Mission8】
タイトル:LET IT FLOW 〜ありのままで〜
Linde Karnebeek (TU Delft)
Hinako Hosaka (Chiba Univ.)
Sho Nakao (Kyoto Univ.)
Karin Akashi (Ritsumeikan Univ.)

 

<発表原稿>
曽我谷川流域を担当しました8班の発表を始めます.
タイトルは「Let it Flow―ありのままで―」です.亀岡の生態系保全と水の共存を重視し,曽我谷川の旧河道を復活させ,亀岡の自然を50年,そしてその先まで残していきます.
現代と過去の護岸施工当時では環境の捉え方は異なっており,昨今のコンクリートの経年劣化による建替えを契機として,新たな流域環境を検討します.
我々のチームでは,最初に敷地の要素のゾーニングを行いました.山,川,住宅地などを書き出し,ハザードマップを重ねて浸水リスクの高い場所にポイントを付けました.また,川や植生などをはじめとして曽我谷川流域周辺エリアの課題点を抽出し,気づいた点を付箋に書き出し地図上に貼りました.
現地調査で撮った写真をもとに,場所の可能性について検討しました.亀岡らしさを見つけるためにパースやアイデアシートを描いていく中で,豊かな自然と山々を意識した場所性を見つけていきました.

(レイヤー分析)
曽我谷川には河川整備によって役目を終えた旧河道の痕跡が,今なお田園地帯に残っています.そこで,人々はかつてどのような自然環境に囲まれ,どのように適応・克服してきたのかを明らかにするため,複数のレイヤーを用いて分析を行いました.
1層目のレイヤーは水利系統についてです.今昔地図を参考に現況の河川を青色,旧河道を水色にて示し,洪水による浸水時にできたと考えられる水路の形跡から浸水領域の境界線を黒色で示しました.また,現代のハザードマップとも比較しその妥当性についても確認しました.
2層目のレイヤーはエコロジーについてです.1層目のレイヤーをもとにそれぞれのエリアと本来の河川との関係性について検討しました.黄色は浸水のリスクが少なく農地として有用なエリア,緑は山林部で浸水による影響がない森林エリアを示しています.曽我谷川の沿線は浸水リスクが高いと同時に豊かな生態系を育む場所と捉えました.
3層目のレイヤーは文化についてです.ここでは農地の整地や集落,河川改修など人為的な痕跡を抽出し,人と河川とのかかわり方について模索しました.1,2層目のレイヤーを重ねた結果,整備された農地や山辺の神社や昔からの集落など,浸水領域外の比較的安全な位置に文化が生成されてきたことがわかりました.

(デザイン提案)
3層のレイヤーによる分析結果を受けて,私たちは自然の河川が人々やその周辺環境とどのように互いに影響し合い景観を生み出してきたのかに着目しました.その際、河川の蛇行が周辺の起伏や植生にグラデーションを生む点、また河川長が延長され周囲一帯の吸水性をあげる点などに目を向け,河川本来のもつポテンシャルを活かしたデザイン提案を行う方針としました.
長期の将来ビジョンとして,河川改修前の旧来の河川の再生を通し,自然の植生の回復機能を活かした,低コストかつ曽我谷川固有の遊水池の生成の達成を目指します.また,レジリエンス・維持管理・ランドスケープ・生態系のバランスを,自然と人為の両環境の性質を織り交ぜながら達成していく手法を,私たちのグループでは“モザイクシステム”と称し,グラデーションをもって河川流域の整備デザインに落とし込みました.
このデザインは短期間で行う整備によるものではありません.この先長い時間をかけて行う計画により達成を目指す将来的な理想図となります.亀岡の景観を大きく変容させる長期計画の第一歩として,今ワークショップではその段階的な整備内容におけるデザイン提案をもって終わりたいと思います.

(段階的整備計画)
今回の段階的整備案として掲げるコンセプトは「Sogatani Symphony」です.曽我谷川の旧河道を小路として整備し,氾濫時の水の逃げ道とすることで減災を図るという目的を達成する中で,アユモドキをはじめとする曽我谷川の豊かな生態系を再生し,その共生を願う想いから着想を得ました.詳細な整備内容としては,河川が最も低くそこから緩やかに勾配が付く自然な地形を取り戻すため,適宜掘削・盛土をします.主に曽我谷川中流域を対象とし,地理的特徴から5つに分類した整備イメージを示しています.
①の河川断面においては,都市部にあたり河道の拡張が難しい点から現況の河川の中に段差を作りそこに新しく植生を創出することを目指します.
②の河川断面においては,左岸には田園地帯,右岸には田園地帯と旧河道があります.左岸の田園地帯には区画ごとに盛土をし,数㎝のステップを作ることにより,浸水後の河川への流入水を段階的かつ緩やかなものにします.右岸については旧河川沿いを親水空間である湿地として整備を行い,有事の遊水地としての機能を果たすように整備するとともに,田園地帯に関しては左岸同様ステップを作ります.
③の河川断面においては,左岸は②と同様に整備し,右岸の山部に関しては,樹木の一部を広葉樹に植え替え,将来的な維持管理費用の削減に努めます.
④の河川断面においてはコンクリート護岸が施されており,短期的整備においては費用面から撤去が難しい点を考慮し,河川構造自体には変更を加えず,河川区域を拡張することにより実質的な河川幅の拡張を考えています.そのため具体的な整備内容としましては両岸の田園地帯にステップを設けるにとどめています.また,景観上コンクリート護岸の上に地被を設け,緑豊かな印象を演出します.
⑤の河川断面においては右岸のみコンクリート護岸が施されています.そのため左岸を湿地とし,遊水機能を持たせることにより,右岸の住宅地の浸水リスクを低減しています.

以上が短期の段階的な整備内容となります.現代に残るコンクリート護岸や直線への河川改修は確かに多くの人々に安心感を与えるとともに技術の進歩を示すものでありました.しかし一方で,コンクリートによる河川構造物は透水性に乏しく,堤防のかさ上げをすれば亀岡の良好な景観が損なわれ,河床を掘り下げれば地下水位はさらに低下し,田園地帯に乾燥を招きます.この点において,ありのままの自然を取り戻すことを通じて農地を潤し,流域治水も併せて達成する本計画が合理的であるということがお伝えできればと思います.

以上で発表を終わります.

<質疑応答動画>

 

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